雲照 伏見街道を行く

 明治の初め 鳥羽伏見の戦いの最中、伏見街道を歩く僧侶がいた。雲照である。あたりでは合戦が始まっていた。そばにいた別の僧侶が
「わき道を行きましょう」
と言うと、
「何を言うか。仏道を志す者、本道を行かないでどうする」
と一括した。
すると、刀を持った兵隊が現れた。それに動じない雲照の姿に感銘を受けた兵隊たちは、雲照らに銭を渡してまた去って行ったという。

この逸話は、何も昔話ではない。いま混迷の世において、私に本道を行けと言う、今を生きる僧侶に向かっての叱咤激励の話である。

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