金沢の二十一世紀美術館に、是非見ていただきたい作品があります。アニッシュ・カプーアの「世界の起源」です。斜めの壁に楕円を描き、それが見る角度によって浮いているようにも見えるのです。自分の感覚がなくなるような不思議な体験を味わえます。

 有るようでもあるし、無いようでもある。条件が変われば、見えるものが変わってくる。縁によって成り立ち、縁によって変わるのです。私が今ここにいるのも、様々な縁が複雑につながり私を構成しています。これを「仮和合(けわごう)」といい、理論を「空」といいます。私は私のようで私ではないのです。仮に私と言っているだけなのです。仏教の特徴であり面白さです。
 現代は私らしさを追求する時代です。ところが仏教は()を否定し「(くう)」を説くのです。私らしくない部分も私の一部分であり、受け入れていくことを大切にしていくのです。般若心経(はんにゃしんぎょう)には、すべては「(くう)」であることを説き明かしていきます。そして、「(くう)」であることも考えてはいけないと徹底的に無我(むが)を説きます。

saikohji
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