苦

　以前、外出先で娘がラーメンを食べた時に、「こんなにおいしいラーメンは食べたことがない。」と言いました。連れて行った親としてはうれしい言葉です。さらに娘は続けました。「もう他のラーメンは食べられない。」といいました。さあ、これには参りました。それからというもの、他のラーメンではおいしいということがなくなったのです。
　皆さんはこういうことはないですか。味噌はここがいい、醬油はここだ。海苔はここが一番だ。

　知識や経験を積んでいくと、あっちのほうがいい、こっちのほうがいいと出てきます。

　実は、これは「煩悩(ぼんのう)」であり、「苦(く)」の素でもあるのです。

　素晴らしいものと出会えた、最愛の人とめぐりあえた、そうするといずれは素晴らしいものと別れ、最愛の人と別れなければなりません。いかんしがたい「煩悩(ぼんのう)」であり、「苦(く)」の素でもあるのです。

　仏教(ぶっきょう)のスタートは、お釈迦(しゃか)様が「生きていくことは苦しいな、思うようにならないな、いかんともしがたいな」から始まりました。