滑り台で立ち往生する子ども

ある日、子供と公園を散歩していると滑り台のほうから鳴き声が聞こえた。何やら人だかりができていたので見てみると、二歳ぐらいの子が滑り台のてっぺんで動けずに立ち往生している。おそらく一人で登ったものの、怖くて降りれなくなったのであろう。母親が滑り台の下でおいでおいでと心配そうに声をかけている。子供は階段で戻ろうにもそこにはほかの子どもがびっちりと並んでいてどうにも動けない。親も階段から助けに行くことができない。
戻ることもできず、滑ることもできずどうすることもできないのだ。
私はお母さんにちょっとだっこしますよと声をかけ、滑り台の滑るほうから上り、その子を抱き上げて母親に届けたのだ。
あとから考えてみると、あの時の光景は二河白道に似ていると思った。二河白道とは念仏の道を比喩にしたものだ。盗賊や虫たちに追われてどうすることもできない旅人が出てくる。前には火の川水の川でどうすることもできないが、そこに白い細い道があり、弥陀は来い来い、釈尊は行け行けと声をかけているのである。
滑り台の子どもも前に進めず、後にも帰れず、こちらから抱き上げたのだ。
いかばかり差異はあるものの、現代版二河白道だと思った出来事であった。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です