愛別離苦は最も切ない

別離等の苦におうて、悲歎せんやからをば、仏法のくすりをすすめて、そのおもいを教誘すべき事。
 人間の八苦のなかに、さきにいうところの愛別離苦、これもっとも切なり。まず生死界の、すみはつべからざることわりをのべて、つぎに安養界の常住なるありさまをときて、うれえなげくばかりにて、うれえなげかぬ浄土をねがわずんば、未来もまた、かかる悲歎にあうべし。しかし「唯聞愁歎声」(定善義)の六道にわかれて、「入彼涅槃城」(同)の弥陀の浄土にもうでんにはと、こしらえおもむけば、闇冥の悲歎、ようやくにはれて、摂取の光益になどか帰せざらん。つぎにかかるやからには、かなしみにかなしみをそうるようには、ゆめゆめとぶらうべからず。もししからば、とぶらいたるにはあらで、いよいよわびしめたるにてあるべし。酒はこれ、忘憂の名あり。これをすすめて、わらうほどになぐさめて、さるべし。さてこそとぶらいたるにてあれと、おおせありき。しるべし

覚如上人「口伝鈔」より

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