愚禿

身近な仏教用語ではないのですが、親鸞(しんらん)聖人(しょうにん)の人間性を知るうえで重要な言葉ですのでご紹介させていただきます。

 「()禿(とく)」とは、親鸞(しんらん)聖人(しょうにん)が独自に作られた言葉です。「()」は、愚かである事、「禿(とく)」は、剃髪(ていはつ)はしているけれども、戒律(かいりつ)を守れない堕落した僧侶(そうりょ)の事を意味します。聖人(しょうにん)は、この語を持って自らの姓とされました。

 その時期は、親鸞(しんらん)聖人(しょうにん)比叡(ひえい)(ざん)を下り、(ほう)(ねん)聖人(しょうにん)の元でお過ごしになられたのが三十代前半です。三十五歳の時に、()宗派(しゅうは)念仏(ねんぶつ)批判(ひはん)()鳥羽(とば)上皇(じょうこう)の逆鱗に触れるようなことがあり、念仏(ねんぶつ)停止令(ちょうじれい)が出されます。親鸞(しんらん)聖人(しょうにん)は越後へ流罪(るざい)となりました。その際に、還俗(げんぞく)させられ、藤井(ふじい)(よし)(ざね)という俗名(ぞくみょう)が与えられます。しかし、親鸞(しんらん)聖人(しょうにん)は自らを()禿(とく)という姓を名乗られました。

 (そう)にあらず (ぞく)にあらず この故に禿(とく)の字を以て姓とす真宗(しんしゅう)のみ教えは立派になっていく教えではありません。自らの浅ましさと阿弥陀(あみだ)如来(にょらい)慈悲(じひ)の深さを日々聞かせていただくのです。

saikohji
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